私は、定年退職したあとは、土日に山歩きをすることはほとんどなく、平日の静かな山歩きを楽しんでいます。しかし、今回は、あえて日曜日に出かけました。それは、笠取山の田辺静さんが土日しか小屋に上がってきていないからです。
茗渓堂が昭和55年に出版した『続 静かなる山』という本があります。そこに、横山厚夫さんが笠取山のことを書いています。
その文章がとても良く、朗読しようと思っていました。その文章に出てくる田辺静さんの話が面白いのです。それでいつか田辺靜さんにお会いしたいと思っていました。横山さんからは田辺さんによろしくお伝えくださいと言われたので、日曜日に行ってきたのです。
やや冷たい風が強かったですが、とてもよく晴れて展望を楽しむことができました。
朝3時に家を出ましたから、勝沼のインターを降りたときは、まだ夜の景色です。大菩薩峠の方へ上がって行く途中で、空が少し明るくなってきました。柳沢峠を超えて青梅街道を下り、途中から一ノ瀬へ向かう道へ入りました。
登山口である作場平についたのは5時半ごろです。30台ぐらいは停められる駐車場は一杯でした。かろうじて奥に3台ほど停められるスペースが残っていたので、そこへ駐めました。
昨年の9月に来た時には工事中だった駐車場のトイレは新しくなって出来上がっていました。
秋田でクマの被害が出ています。それで、今回は、初めてクマよけの鈴をつけ、ラジオも持って行きました。道の脇に足跡がありました。爪の感じと、大きさからクマのものだと思われます。まだ新しいです。
前回は、藪沢沿いの道をそのまま尾根まで上がりましたが、今回は、一休坂という急坂のコースを登ることにしました。ちょうど紅葉の季節なので、尾根道の方が景色を楽しめると思ったのです。
一休坂は、ミズナラの自然林の中を登って行く道です。私は、途中で休憩したので、50分ぐらいかかってしまいましたが、一休坂は40分ぐらいで登れるのではないかと思います。急坂が終わると水平に近い道がしばらく続きます。
道が一旦下って、沢を渡り反対側の尾根に取り付いて登って行ったら、笠取小屋はもうすぐです。
小屋の下の水場に着きました。昨年は、もう少し上に水場があったはずなのですが、そちらのほうは、沢が少し荒れている様子なので、水場を作り直したのでしょうか。このことは、笠取小屋の田辺さんに聞いておけばよかったです。この水場から約4分で笠取小屋です。
笠取小屋は小屋の奥と、手前にテント場があります。全体で8張ほどテントがありました。そのくらいの登山者が前日に来たにしては、駐車場の車が多すぎます。その謎は降りてからわかりました。
田辺さんとにお茶をご馳走になり、少し話をしました。でもそれほど長い時間ではありません。今度小屋に泊まりにきてじっくりお話を伺いたいものだと思いました。
昨年工事中だった新しいトイレは出来上がっていました。
紅葉が美しいです。しかし、ふと足元をみると、太い霜柱があります。かなり夜は冷え込むようです。
多摩川と荒川と富士川の3つの川の分水嶺がこの先の小さな峰です。そこには、たくさん登山者がすでにいる様子なので、行きには立ち寄らず巻道を行きました。
笠取山の山頂へは、まっすぐに伸びる急坂の登山道です。私は途中で力が出なくなったので、少し休んでカロリーメイトを食べました。朝3時前にパンを食べて来たのですが、エネルギー切れを起こしたようです。登るのが大変そうに見えますが、休憩も入れて約30分で山頂へ到着しました。
若い人だったらその半分で登れるかもしれません。
山は、あれが山頂だと思って頑張って登ると、その先にピークが見えて来て、そちらが山頂だと、がっかりすることがあります。しかし、笠取山は、見えている岩が間違いなく山頂です。そこを目指して頑張れば良いのです。
快晴で山頂からの眺めは素晴らしかったです。目の前のカラマツの林は横山さんが「我がシャーウッドの森」とおっしゃっていたところです。
とても良い景色なのですが、吹く風がかなり強く冷たいです。長い間、その風に当たっていることはできません。岩陰に風除けを求め、持って行ったサンドイッチを食べました。しかし、そこで絵を描くことはできそうにありません。
それに、なかなか、こうしたパノラマ的な景色は絵にするのは難しいのです。
右に見えている草原は雁峠です。そこへ行けば、笠取山を描くことができるのではないかと考え、早速そちらへ行くことにしました。山頂はとても良い景色だったのですが、冷たい風に耐えられず、15分ぐらいしかいませんでした。
行きに立ち寄らなかった分水嶺に上がりました。霜柱が溶けて地面はグチャグチャです。その分水嶺を降りたところが雁峠への分岐点です。
雁峠は気持ちの良さそうな草原です。しかし、峠は風の通り道になっていました。峠というからには、そこを横断する道があるはずですが、新地平の方への道はありますが、秩父の方へ降る道はありません。スケッチをしている間、新地平へ降って行く登山者は何組もいました。
峠の反対側の登山道の片隅に風があまり当たらない場所を見つけ、そこで約30分ほどで水彩スケッチをしました。
風が強くなければ、寝転がってずっと青空を眺めていたい場所です。
帰りは、笠取小屋へは立ち寄らず、一気に山を下りました。駐車場には、まだ車がたくさん停まっています。そこから犬切峠を経て青梅街道へ出ましたが。途中の道端にも車がたくさん停まっていまいした。それでやっとわかりました。どうやらキノコ採りに来た人たちの車のようです。そういえば、登山道の脇にもキノコが生えていました。しかし、先日聴いたFM八ヶ岳の番組「デイインライフ」で長沢さんが語っていたようにキノコ中毒になっても行けませんから、それらは採って持ち帰ることはしませんでした。
天気は良かったですが、風は冷たく、朝は氷点下だったのでしょう。あの猛暑はどこへやらで、山は一気に晩秋から冬へと移って行く様子です。
お昼過ぎに高速へ乗ったのですが、この好天気ですから、出かけた人も多いのでしょう。帰りは久しぶりに高速の渋滞につかまりました。