· 

北海道と東北の旅

 出来ることなら、旭川まで行って冬の大雪山の絵を描きたかったのです。しかし、調べてみると、新幹線で函館まで行ってもそこから旭川まではかなりかかることがわかりました。飛行機と鉄道の組み合わせなら楽でしょうが、今回は大人の休日倶楽部を利用しての旅行ですから、全て鉄道ということになります。私は、まだ北海道に行ったことがありませんでしたから、まずは、函館で良しとしました。

 2泊目は、秋田の乳頭温泉に泊まりました。このあと紹介しますが、ここが想像以上に良かったです。


 新幹線は新函館北斗という駅が終着駅です。東京から4時間21分です。青函トンネルを通るときはどのようだろうと思っていましたが、当たり前ですが、長いトンネルに入ったというだけの感じです。今青函トンネルに入りましたという車内放送はあります。

 新函館北斗駅から函館駅までは快速で15分程です。

 この日は、大沼公園に宿泊ですから、函館は昼食に立ち寄るだけです。

時間がたくさんあれば函館山まで行くところでしょうが、日の高いうちに大沼公園で駒ケ岳を見たかったので、滞在時間を短くしました。


 函館駅の前に函館朝市という路地があります。ウニやイクラの海鮮丼が主流です。私は、普通の海鮮丼にウニをトッピングしてもらいましたが、確かにウニは美味しいです。ウニを山盛りとなるとそれなりの値段になってしまいます。タラバガニも売っていますが、4000円以上はします。


 函館駅からは札幌行きのスーパー北斗という特急に乗りました。満席なので、デッキに居ました。函館から大沼公園までは30分ぐらいです。

 泊まる予定のグランヴィレッジ大沼というロッジは駅から1.5㎞ほど行ったところです。歩くには少し距離があるので、タクシーを呼びました。

 帰る時にわかったのですが、駅から5分ぐらい歩いたところから駒ケ岳がよく見える公園があったのです。ロッジに荷物を置いてロッジの近くから駒ケ岳を描くことしか考えていなかったので、よく調べていなかったのです。


 グランヴィレッジ大沼に着いたのは1時ごろです。チェックインは3時からになっていますが、荷物を置かせてもらいました。ロッジから10分ほど歩いたところに見晴らしが良い場所があると教えてもらい、そこへ行ってみることにしました。

 大沼に沿った道を西の方へ歩いて行きました。雪はあまりありませんが、ガチガチに凍っています。10分ほど歩くと、岸辺の樹林帯が切れて駒ケ岳が湖面の向こうに見える場所に着きました。湖面は凍っているようですが、岸辺のところだけ溶けていました。

 残念ながら駒ケ岳の山頂は雲の中です。

 しばらく待ちました。

 湖面の向こうから吹いてくる風がとても冷たいです。

 家内には、先にロッジに戻るように言って、水彩を描き始めました。

しかし、駒ケ岳はなかなか雲から姿を表しません。しかも、気温が低いらしくパレットの上に氷が張り始めました。ヒューと冷たい風が吹くと水彩紙の上で塗ったばかりの水彩の絵の具の水が凍りました。全く描くことができません。

 諦めて、ロッジへ戻ることにしました。

 ロッジでお湯をもらい、ロッジの前から向こうに見える大沼への道を描きました。先ほどの場所のように冷たい風が直接当たらないのと、もらったお湯のおかげで、絵の具が凍らずに描くことができました。


 グランヴィレッジ大沼の泊り客は私たちだけでした。部屋は広くて清潔で快適です。食堂になっているログハウス部分は建ててから20年になるとのことですが、木の色合いも美しくそれほど年月が経っているようには思いませんでした。食堂の横に手作りのグッズを売っているコーナーがありました。オーナーの奥様とそのお友達が作られた物だそうです。美しいドライフラワーがたくさんありましたが、それらはロッジの近くで採ったものから作ったとのことでした。

 部屋というよりも建物全体が暖かく真冬でも快適でした。

 

 朝食の時に出た牛乳がとても美味しかったです。牛乳の良い香りがあるのですが、飲み終わった感じはサッパリとしているのです。

 大手のメーカーではなく、地域の酪農家で作っている牛乳だそうです。「近所に牧場があるのですか?」と家内が聞くと「すぐそこです。あの山の向こう側です。」と、さすが北海道だなと思いました。

 

ここはオススメのロッジです。

 翌朝、ロッジのご主人に駅まで車で送ってもらいました。

新函館北斗駅までの特急の時間まで1時間半ほどあったので、近くの公園まで行き、そこから駒ケ岳をスケッチしました。

 昨日は曇って見えなかった駒ケ岳もこの日の朝は綺麗に見えていました。

 湖面は観光のスノーモービルが走り回っていました。


 大沼公園駅から新函館北斗駅までは特急で1駅です。新函館北斗駅から盛岡駅まで行き、そこから秋田新幹線へ乗り換えました。

 盛岡駅から田沢湖駅までも新幹線では1駅です。

 田沢湖駅から乳頭温泉へ向かうバスは、新幹線の到着時間に合わせて運行されており、それほどの待ち時間なく、バスで出発しました。

 乳頭温泉の「鶴の湯」は、バスの終点「乳頭蟹場温泉」ではなく、途中の「アルパこまくさ」で鶴の湯のマイクロバスに乗り換えなければなりません。このことは、乳頭温泉郷のホームページを見てもわかりづらい表現になっています。メインの道路から分かれて鶴の湯の方へ行く道のところに看板が立っています。ここから鶴の湯までも結構距離がありました。歩いたら1時間はかかるのではないでしょうか。

 鶴の湯は、たくさん温泉宿がまとまってある温泉郷からは離れたところにあるのです。


 羽後交通の路線バスが行く乳頭蟹場温泉とは谷を隔てて向こう側にある感じです。マイクロバスは大雪になったら通れなくなるのではないだろうかと思うような山道を谷に向かって下り、そして登って行きました。途中乳頭温泉山の宿があり、鶴の湯はさらに先でした。

 建物はかなり古く、タイムスリップしたかのような感じです。

 マイクロバスを降り、建物の間の道を奥まで行くと事務所があり、そこで宿泊手続きをしました。私たちは初めての利用者でしたので、受付のあと、係の人が案内をして説明をしてくれました。

 川の向こうにあるのが大きな露天風呂です。混浴になっています。灯のついている建物の手前側が男性の脱衣所で、奥に女性の脱衣所があります。女性は、奥の脱衣所から女性用の風呂に入り、湯に浸かったまま混浴の大きな露天風呂へと来るものと思われます。夕暮れに湯から頭だけ出していると、湯けむりの中で女性か男性かわかりません。

 湯は青白く濁っており、湯けむりが立っています。私はメガネを外していましたので、なおさら見えません。奥の方に居た方が女性だったと気づいたのは後になってからです。

 女性の方のためには、女性専用の露天風呂がもう一箇所あるようです。家内はそちらへ行きました。

 男性が使える露天風呂は混浴の場所しかありません。混浴の露天風呂は奥行き15mほどはありそうです。手前と奥では湯の温度がかなり違います。奥の方は、上から源泉が流れ落ちてくるだけでなく、底の方からも湯が湧いてきています。泡が盛んに浮かんで来る場所があり、そこは熱いです。

 混浴の露天風呂がある場所は中湯と呼ばれ、脱衣所の脇に小さな湯舟があります。ここは露天風呂よりも熱いです。

 他に、黒湯と白湯という湯舟が建物の中にあります。露天風呂よりは小さいですが、深さがあります。それに露天風呂よりは熱めなので、体はすぐに温まります。

 

 温泉に入った後、部屋に戻ると脱力感があり、そのまましばらくうたた寝をしてしまいました。部屋の中は暑いぐらいでした。

 目がさめると外は暗くなっており、雪の小山にはロウソクが入っていました。


 食事は、山菜と岩魚の塩焼き、豆腐料理、きりたんぽなどです。全体に味は濃いです。我が家は薄味なので、なおさら濃く感じました。

 山菜が色々な種類あるのは、さすが山の中の宿だと感じました。


 朝食の前に風呂へ行きました。露天風呂、黒湯、白湯全て入ってきました。

朝食の後、マイクロバスの時間まで1時間半ほどあったので、外でスケッチをしました。

 こちらのスケッチはマイクロバスに乗って、出発までの間、窓から描いたものです。


 帰りは、田沢湖駅から秋田新幹線のこまちに乗りました。そのまま東京へ行くのではなく、盛岡で降りました。盛岡で昼食をとることにしたのです。盛岡と言えば「わんこそば」と思っていましたが、今は「わんこそば」と「ジャージャー麺」と「冷麺」が盛岡の名物になっているのだそうです。

 そこで「冷麺」を食べることにしました。「ぴょんぴょん舎」という店が駅の近くにあるのを見つけて入りました。ここは観光客が多く来るようです。

 私は中辛を選びましたが、それでも結構辛味のある冷麺です。冬でも人気があるようでした。

 帰りは、「こまち」ではなく「はやぶさ」に乗って帰りました。盛岡で「こまち」と「はやぶさ」が連結されるのです。

 新幹線の中では本を読む時間が十分ありました。普段車で旅行することが多いのですが、電車は本を読むことができて良いです。それと缶ビールを飲めるのも良いです。

 本はこの旅行で文庫本を2冊読むことができました。

 この旅行で北海道へ初めて行きましたが、北海道らしさを味わえたかどうかわかりません。今年は雪が少ないようです。

 グランヴィレッジ大沼は居心地の良いロッジでした。

 今回の旅行で一番良かったのは乳頭温泉鶴の湯です。幻想的な世界へタイムスリップしたような感じです。

 盛岡で買って食べたカツサンドが胃にもたれていたのですが、鶴の湯の温泉に入ったらすぐに治ってしまいました。

 軒からは太い氷柱の下がる深い雪に埋もれた温泉宿ですが、わざわざ訪れる人が多いのがわかる魅力ある温泉だと思いました。まだ行ったことが無い方には是非と言いたい温泉です。夏はどうなのかわかりませんが、雪明りの中の温泉が特に私は美しいと感じました。温泉の写真は撮ることができないので、紹介できないのが残念です。