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坊主山探し

 私の「山の絵展」に来てくださった方が、個展が終わってから「藤野の里山」の作品を購入してくださいました。「昔自分も家内と二人で藤野駅前の里山に登ったので、懐かしくどうしても欲しい」と言ってくださったのです。

その時に、「坊主山」はこの絵だとどのあたりだろうとおっしゃったのです。話をよく伺うと、一本松山と京塚山の間にあるらしいのです。

 この絵は、京塚山の東側しか描けていませんから、この絵には載っていないのですが、そもそも私には「坊主山」という山名の記憶がないのです。

 私に中央線沿線の低山の魅力を教えてくださった山の先輩にその話をしました。山の先輩も最初は「坊主山」という山名に記憶が無いようでした。しかし、「いつも、横を巻いて通っているピークがもしかしたら坊主山ではないか」「今度、一緒に坊主山を探しに行きましょう」と言ってくださったのです。


 藤野の駅から遠くに白いものが見えていました。雲ではなく、南アルプスのようです。

 休日なので、名倉の循環バスの本数がありません。駅から歩いて行きました。桂川の向こう側に京塚山が大きく見えています。写真の右端は一本松山です。その間のピークが坊主山なのでしょう。


 晴れて風もなく、穏やかな小春日和です。総勢6名で出かけました。


 名倉峠へ向かう道の途中から一本松山へ上がる道があります。私は、今まで石楯山から尾根続きに歩くコースしか通っていないので、この道は初めてです。

 階段の登りで、高度を稼いで行きます。見晴らしの良い場所に出ました。振り返ると、先日登った鷹取山への尾根が見えています。右から三つ目の鉄塔のところが「藤野の里山」を描いた場所です。


 よく眺めると、あちらこちらの崖にブルーシートがかけられているのがわかります。台風19号の爪痕です。

 この場所には祠があります。一本松山は別名「蚕影山(こかげやま)」と言われます。養蚕が盛んであったこの地域の養蚕の神の山なのでしょう。


 もう少し登ったところにも祠と石碑がありました。石碑には「記念碑 このお山の松は敬神の念の厚い野崎弘さんが大正九年三月大志を抱いて上京するに當って氏神様に祈念し植樹奉納したものでありますので何時までも栄える様に切らないで永遠に皆でお守り致しましょう。昭和三十九年十一月 氏子中」と彫られていました。

 しかし、植樹された松がどれなのか見渡したところわかりませんでした。

 10時半に藤野駅から歩き始めちょうど1時間少しです。昼前ですが、一本松山の山頂で昼食にすることにしました。

 一本松山の山頂にて 水彩


 一本松山から京塚山へ尾根道を歩いて行くと、いくつか2つほどピークがあり、道は横を巻いています。ピークまで登ってみましたが、それらは坊主山ではありませんでした。やがて、目の前に比較的大きなピークが現れました。まだ京塚山ではありませんから、坊主山はこのピークに違いありません。メインの道はこのピークの南面を巻いています。しかし、ピークへ向かってそれまでとは違って比較的はっきりとした踏み跡がありました。

 これをみんなで登って行きました。

 やはり「坊主山」でした。


 新しい山名表示が取り付けられた木の横に、山名表示のテープを巻いた木がありました。以前はこの表示だけだったのでしょう。

 坊主山から京塚山へ向けての下りは、踏み跡はありますが、不明瞭なところもあり、あまり通られていないようでした。


 道は、一旦北西側の斜面を巻く道となり、分岐点に出ました。ここから麓へ下りて行くこともできます。京塚山へは、V字に登り返す道です。この分岐点からすぐ行く手にピークが見えていますが、これは京塚山ではなく、その手前のピークです。このピークも南面を巻くことができます。

 京塚山への登りは、鎖の手すりがある急斜面です。登りでは鎖は必要ないでしょうが、落ち葉の下に石があり、滑りやすいので、下りでは鎖が安心かもしれません。


 京塚山は藤野駅前の里山の中ではどっしりとした代表格です。見晴らしも良いです。京塚山の別名「石山」の由来の大きな丸い石があります。


 山頂の南に展望台があります。ここからは正面にラクダのコブのような石砂山が見えています。石砂山は蛭がいるのですが、今の時期は大丈夫でしょう。

 京塚山から下って行くと、「緑のラブレター」のアート作品の上に出るルートがあります。前回、立ち寄っているので、今回はそのまま下ることにしました。

 集落まで降りてきたところにバス停があります。前回は平日でしたので、名倉循環のバスがありました。休日はシュタイナー学園がお休みなのでバスの本数が少ないのです。

 麓に降り着いたのは1時半ごろですから、あとバスは1時間以上無いことがわかり、駅まで歩いて行くことにしました。

 途中、弁天橋のところで、橋の上から釣りをしている人たちがいました。ワカサギが釣れているようです。10匹ほど釣れているようですが、聞いてみると今日はあまり釣れていないそうです。20匹は釣れないとビールの肴にはならないと言っていました。

 駅には2時少し過ぎに着きました。電車は2時40分です。日は少し陰ってきましたが、まだ暖かいです。のんびり待って帰りました。