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個展の合間に権現岳へ

 個展の期間中に滞在していた小淵沢から眺めた西岳・編笠山・権現岳です。右から三つ目のピークが権現岳です。三つ並んだ小さなピークの真ん中です。その左横の大きな三角形は編笠山です。西岳は一番左のピークです。

 小淵沢からは赤岳は見えません。権現岳が一番奥に見えるので、この地方での八ヶ岳の象徴的な存在です。山岳信仰の山としての歴史もあるようです。

 

 昨年の秋に権現岳を目指した時には、風邪気味なのを押して登山したため青年小屋までたどり着いた時に熱が出てきてしまい、そこから引き返したのです。

 リベンジの意味を含めて個展期間中にチャレンジしました。今度は体調は万全です。


 観音平に車を駐めて登り始めました。最初は笹原の中の木立を抜ける緩やかな登りです。50分程登ると、「雲海」と呼ばれる休憩ポイントに着きます。

 その少し手前に大きな岩がありますから、岩が見えてきたら「雲海」が近いのです。


 「雲海」からしばらくは笹原が続きますが、笹原がなくなると、岩だらけの道になります。あたり一帯が岩なので、道がはっきりとはしませんが、岩の擦れ具合や岩に記されたペイントや樹木につけられた赤いリボンがコースの目印になります。


 「雲海」から50分ほどで「押手川」に着きました。ここから編笠山へ直登する道と、青年小屋への巻道が分かれます。編笠山へは明日登ることにしていたので、青年小屋への巻道を進みました。

 巻道と言っても、最初は登り続けます。それがようやく水平に近い巻道になると、道は水たまりが多くなってきます。押手川の分岐から1時間ほど歩いてやっと「青年小屋20分」の表示があるところへ出ました。ここからはまっすぐ青年小屋へ向けて登ります。


 青年小屋には朝の9時半過ぎに着きました。青年小屋に泊まることにしていたので、宿泊の手続きを行い、余分な荷物を部屋に置きました。この時点では宿泊予定者は私だけでした。

 少々早いですが小屋の前で食事を作り、腹ごしらえをしました。

小屋の前を出発したのは10時半ごろです。着いた時よりは雲が出てきました。

小屋の前から権現岳へ向けて登って行きます。向かい側にある編笠山と同じ高さになってきました。


 のろし場と呼ばれる場所からはギボシや権現の山頂が見えています。標高2530mとありますから、編笠山2523、7mよりも高い場所です。登るにつれ雲が湧き立ってきました。


 鎖場をだいたい過ぎたあたりで、ついに雨が降ってきました。雨具を着てしばらく進むと権現小屋に着きました。少し天気の様子をみるつもりで小屋に入りました。中には青年が一人小屋番でおり、ギターを弾いていました。天気予報では午後1時的に晴れるとのことです。しばらく待ちましたが、一向にそういう様子は見られません。


 雲に包まれて何も見えませんが、権現小屋から山頂までは5分ぐらいとのことなので、山頂まで行ってみました。権現岳の山頂は、赤岳方面への分岐から右へ稜線を行ったところにあります。霞んだトンガリが山頂です。


 山頂に行ったあと、再び権現小屋に入りました。するとそこへ一人の若い女性が入って来て、赤岳への道の様子や時間を権現小屋の青年に聞きました。

 このルートは初めてのようです。結局、その女性は霧雨の中、赤岳へ向かって行きました。すぐに長いハシゴがありますから、雨で手強いと思ったら引き返して権現小屋に泊まるかキレット小屋に泊まるでしょう。しかし、赤岳まで行きそうな元気な方でした。

 私は、霧雨の中、青年小屋に戻りました。鎖場は登りよりも降りが嫌な感じです。

 青年小屋まで降りると雨は降っていませんでした。土も乾いていますから、雨が降っていたのは上の方だけなのでしょう。


 権現岳では絵を描けなかったので、青年小屋を描くことにしました。「遠い飲み屋」の赤提灯がぶら下がっています。

 外がだいぶ寒くなってきました。中に入ると談話室にはストーブがついていて暖かかったです。こたつもあります。


 談話室の棚には酒瓶が並んでいます。ボトルキープをしているようです。この小屋へ飲みに通う人もいるようです。

 この日は、私を入れて4名の泊まり客でした。

 トイレは、バイオトイレが新設されていて快適です。ただ、発電機を動かさないと使えない時もあるようです。その時には、手前にある通常のトイレを使うことになります。


 翌朝は、小屋を出発して西岳を目指しました。青年小屋のキャンプ場を突っ切り5分ほど行くと「乙女の水」の水場があります。ここの水は美味しいです。

 水場の横は、山崩れの跡が凄まじいです。西岳へはその荒れた斜面を横切ります。それほど大した登りも無く、林間の気持ちの良い道です。50分ほどで西岳の山頂へ着きました。


 西岳の山頂からは南アルプスの展望が良いです。昔のガイドブックの写真で、西岳から赤岳も見えているものがありましたが、今はこのように赤岳は樹木に遮られてよく見えません。樹木が育ってしまったのです。


 西岳から青年小屋前まで戻りました。青年小屋には権現小屋の小屋番の青年が降りて来ていました。青年小屋は若い男女のスタッフだけです。小屋主の竹内さんは週末にだけ登ってこられるのだそうです。

 青年小屋から編笠山への道は積み重なった大きな岩の上をルートを選んで登って行きます。岩の道が終わると樹木の中の道になりますが、山頂は岩が積み重なっており、樹木はなく360度の展望です。

 山頂に着いた時には、赤岳も横岳も見えていたのですが、いざ絵を描こうとしたら全て雲に包まれてしまいました。

 どうやら編笠山の山頂部分に雲がまとわりついているようです。


 雲は動いているので、待ちました。1時間ほど待つと、雲が上がって行き、編笠山の山頂は展望が効くようになりました。遠く槍ヶ岳も見えています。

 また雲に包まれないようにと急いで見えている赤岳や阿弥陀岳を描きました。

赤岳は見えていても、権現岳の山頂は雲がかかったままでした。

 編笠山はいい展望台です。風が強い時には遮るものがなく寒そうですが、晴れた日なら良い絵が描けそうなので、赤岳に雪がある春先などに来るのも良さそうだと思いました。

 下山している時に、雲海のところで、私よりも少し年配のご夫婦に出会いました。少し休んでから下山するようです。私が個展をやっていることをお話ししたら。後日、アルプ美術館まで絵を見にきてくださいました。

 今回、山で出会った人が今の時点で3グループ、個展に来て下さいました。何かの縁と言いますが、良い出会いに恵まれました。