· 

梅雨明けの仙丈ヶ岳

 長かった今年の梅雨もようやく明けた7月29日(月)に南アルプスの仙丈ヶ岳へ行って来ました。仙丈ヶ岳は初めてです。北沢峠からそれほど時間をかけずに行けそうなので、十分絵を描く時間がとれるだろうと考えました。

 29日は、昼前から雲が出て来てきました。馬の背ヒュッテにはお昼過ぎに着いたので、宿泊手続きをしたのち、仙丈ヶ岳が良く見える場所まで40分ほど登ってみました。水彩を描き始めたところで、雲に覆われ、雷の音も聞こえてきたので慌てて小屋まで戻りました。その日の夕方や夜半は雨がかなり降りました。

 翌日の30日は朝から快晴でした。おかげで水彩も4枚描くことができました。ただ、高山植物を描くことも目標の一つにあったのですが、これは十分できませんでした。高山植物は仙丈小屋に泊まって腰を据えれば描けたかもしれません。


 北沢峠へ入るために、私は中央高速を岡谷から名古屋の方へ向かい、伊那ICから一般道で仙流荘というところまで行きました。

 仙流荘には無料の大駐車場があります。手前の第一駐車場は満車でしたが、奥はまだほとんど埋まっていませんでした。

 平日のバスは始発が8:05です。7:00に着いたので、1時間ほど待ちました。同じように早く来られた方が2組いました。話し言葉から関西の方だとわかりましたが、名古屋と大阪方面の方のようです。名古屋からだと東京からよりもかなり早く着けるようです。北アルプス方面も岐阜から入ると早いのだそうです。私は家を朝3時に出てきました。


 バス出発の時間近くになると、続々と登山客が到着し、結局バスは2台で行くことになりました。仙流荘から北沢峠までは55分ほどです。途中、バスの運転手が観光案内風に景色を紹介していました。

 仙丈ヶ岳へはバス停のすぐ脇から登るルートがメインのようです。私は、藪沢沿いのルートを選びました。藪沢沿いのルートは、北沢峠から少し道を戻り大平山荘の脇から入ります。

 北沢峠の少し手前からは車道をショートカットする道があり、重幸新道入口まで10分ほどです。


 藪沢沿いの重幸新道は20分程はなだらかな道が続きます。そして榛の木(ハシバミの木)展望台という開けた場所に出ます。甲斐駒ヶ岳から続く鋸岳が良く見えるらしいのですが、バスで上がってくるときには良く見えていた鋸岳にもう雲がかかっていました。

 


 榛の木展望台の先からジグザグの急な登りになります。時間にして30分ほどなのですが、少々息が切れます。鉄のハシゴを登って小尾根の上に出ます。ここから藪沢大滝が木の間越しに見えるらしいのですが、かすかに見える程度です。写真ではわからないと思います。


 道は小尾根を登っていきますが、すぐに巻道になります。ところが、その巻道が途中崩れているようで、さらに高巻く道を通ってから河原へと降りていきます。河原に降りたのは、新道入口から1時間40分ほどです。ここからは沢沿いの道です。沢の奥はガスっていて見えません。


 沢沿いに歩き始めて30分ぐらいすると左手から滝が流れ落ちてくる場所に出ました。休憩するのに良い場所です。沢沿いの道は沢の様子の変化があり涼しいので癒されますが、意外と傾斜はきつく、樹林帯の急なジグザグ登りと大差ありません。


 尾根道から分かれてきた道と合わさる分岐点に来ました。ここで12:09です。ここから右手へ15分程登ったところに、この日に泊まる馬の背ヒュッテがありました。

 宿泊手続きは1番乗りです。食事は4交代で行われるらしく、一番最初の夕方5時から。翌朝は朝5時からとなりました。100名は入れる小屋のようですが、宿泊予約者は60名ほどらしく、寝場所もややゆとりがありました。

 手続きが終わったら、ここから40分ほどの場所まで上がってみることにしました。

ザックには水彩の道具や椅子などが入っているので荷物を全部持って上がりました。


 馬の背と呼ばれる尾根まで10分。さらに25分程、仙丈ヶ岳の方へ向かって尾根道を上がっていきました。周りはシャクナゲとハイマツになりましたが、曇っていて周りの景色は見えません。しかし25分ほどで着いた広場でしばらくすると雲がさーと流れ、目の前に仙丈ヶ岳が見えてきました。

 仙丈小屋も見えます。

 ここで、持って来た大判の水彩紙を広げて目の前の景色を描き始めました。時折、雲がかかり何も見えなくなりますが、しばらくすると景色が見えることを繰り返しました。そのうちにいくら待っても雲が切れなくなりました。

 仕方なく、近くのシャクナゲを小さなスケッチブックに描き始めました。

 1時間半ほど居たのですが、そのうち、遠くで雷の音が聞こえるようになりました。

「これはまずいかもしれない」と思い。急いで道具をかたずけました。

 小屋に戻る途中、雨粒が岩に点々と落ちるようになりましたが、なんとか小屋に戻るまでは降られずにすみました。登るときに35分かかった道を25分弱で降りてきました。

 この日はこの後ザーザー降りの雨となりました。雨の中を登って来られる方が到着しました。


 翌30日(火)は朝から快晴です。太陽の昇る方に少し雲があり、日の出は雲の上から4:51に顔を出しました。

 朝食は5時でしたので、5時半には小屋を出発しました。前日と違い、尾根上のハイマツとシャクナゲの道からは両側の景色がよく見えます。

 昨日の広場に着いたらすぐに、描きかけの水彩紙を広げ、晴天に恵まれた今日の仙丈ヶ岳を描きました。この段階では、どれが仙丈ヶ岳の山頂であるかよくわかっていませんでした。

 仙丈小屋の向こう側がカールになっています。3つの塊がありますが、右側の塊の中の右から2つ目のピークが山頂です。


 仙丈小屋に着いたのは朝6:48です。絵を描いた広場から20分ほどで上がって来ました。

最初に、小屋の人に予約をしていないが今日泊まれるか聞いてみました。せっかくの晴天なので、じっくりと1日絵を描きたかったのです。

 しかし、残念ながら予約で満員とのことでした。

 高山植物がたくさんある場所なので、じっくりとそうした花を描くには良い場所です。


 まずは小屋の脇の道を右手の尾根へと上がります。あとは稜線伝いに山頂を目指します。尾根からは甲斐駒ケ岳がその独特の山容を見せています。


 山頂に着いたのは7:29です。仙丈小屋から30分少々で上がってきました。岩の山頂ですが、程よい広さがあります。団体さんが上がって来ても居場所が無くなる事はありません。

 山頂の東側に場所を見つけて絵を描くことにしました。


 甲斐駒ケ岳は鋸岳の続きに右手の方に見えていますが、仙丈ヶ岳を後にして、もう少し近づいて行ったところで描くことにしました。

 右手の緑の中にシミのようにあるのが、昨日と泊まった馬の背ヒュッテです。


 日本2番目の標高を誇る北岳は目の前に見えており、その左肩の奥に富士山が見えています。しかし、逆光なのでシルエットになってしまい、絵を描くには難しく感じました。今、写真を見ると青の濃淡だけで描くなど描きようがあったと思います。しかし、先に見えている甲斐駒ケ岳の方が魅力的に見えていて、先を急ぐことにしました。

 仙丈ヶ岳の山頂を振り返るとまだ大勢の人たちが山頂に居るのがわかります。


 カールの奥に見えていた3つの塊のうち山頂以外は巻いて通ります。ピークへの踏み跡はありますが、侵入禁止の❌がありました。

 小仙丈ヶ岳の向こうに甲斐駒ケ岳が見えるところで、スケッチをすることにしました。

 陽の当たり具合が良く、特徴の摩利支天の形がよく掴めます。普段は中央道を通る時など反対側からこの姿を見ているわけです。


 仙丈ヶ岳のカールの奥をぐるっと周りました。それから尾根道から逸れて仙丈小屋へと戻って来ました。

 カール越しの山頂と高山植物の絵を描きたくて、戻ってきたのです。山頂の背景に沸き立つ雲があり、山頂の登山者が小さなシルエットで見えました。

 高山植物は稜線よりはカールの底の方が高山植物が豊富なようです。コイワカガミを描こうとしましたが、あの繊細な花びらの形や色をどうも描けません。時間をかけて表現方法を見つければ出来そうでしたが、仙丈小屋に泊まれないとなると下山するしかなく、時間がありませんでした。

 


 小仙丈ヶ岳へと続く尾根道に戻ってきました。小仙丈ヶ岳へはいくつかのピークを巻いたり越したりして行きます。目の前のピークではありませんでした。逆に小仙丈ヶ岳から登ってくると、仙丈ヶ岳の山頂はまだかまだかと騙されそうです。

 仙丈ヶ岳の山頂から小仙丈ヶ岳へと続く岩尾根は遮るものがなく、今日のように天候が良ければ最高の山歩きとなります。雲が湧き上がってくるのもダイナミックな景色となります。


 小仙丈ヶ岳からはしばらくはハイマツの尾根道の下降ですが、その道もすぐに岩がゴツゴツとした中をまっすぐに下るようになります。そのあとは樹林帯の中のジグザグです。途中、藪沢への分岐点を通りました。ここが五合目となっています。小仙丈ヶ岳を通る尾根道のルートには何合目かを記す表示があるのです。

 北沢峠に着いたのは14:16でした。小仙丈ヶ岳から2時間15分ほどかかっています。

 バスは15:00でしたが、14:30に臨時バスが出ることになり、それに乗ることができました。

 今回は、2日目に晴天に恵まれ、その晴天の中、展望に優れる尾根道を歩くことができたことがとても良かったです。登りに涼しい藪沢沿いの重幸新道を選んだのも正解だったのではないかと思います。

 以下は、今回見ることのできた高山植物の一部です。名前はわかり次第順次記載して行きます。不確定なものには?を付けています。

シロバナヘビイチゴ


タカネグンナイフウロ 黄色い花は不明


シナノキンバイ?


ハクサンシャクナゲ


チングルマ?

ミヤマシオガマ


コイワカガミ