西上州の山は登ったことがありませんでした。妙義山も近くの駐車場から眺めただけです。航空母艦のような荒船山については、その特徴のある山容から昔から知っていましたが、まだ登っていません。
西上州は下仁田を玄関口とする山域と、神流川沿いの山域になります。稲含山は下仁田町のすぐ南にある山で、展望も良いとガイドブックに書いてありましたから、下仁田を玄関口とする山々を眺めることができると思ったのです。
しかもかなり上まで車が入れるので、山頂までは1時間弱です。山登りとしては、物足りないですが、山頂で絵を描けるだろうし、山歩きの苦手な妻も一緒に行けると思い、出かけました。
下仁田の町から南へ橋を渡って栗山川沿いの林道を進みます。清流荘という宿の方面です。途中から道を左へ高倉川沿いの道へ入ります。分かれ道には「稲含山」という表示があるので、それを見失わなければ大丈夫です。林道は最初はアスファルトですが、途中から砂利道になります。道はかなり登って行きます。30分以上山道を走ると、急に開けたところに出ました。ここがガイドブックに書いてあった駐車場なのでしょう。下仁田町で作っているガイドブックには、鳥居下に3.4台停められると書いてあったので、そちらへ行ってみました。
平日なので、誰もいません。一応、車は端に寄せて停めました。看板があるところからすぐ上に赤い大きな鳥居が見えていました。
この山は、麓から歩くのは大変です。ガイドブックには下仁田の駅から徒歩だと2時間と書いてありました。
鳥居から登山道になります。左側が針葉樹の植林、右側は広葉樹の自然林となっている尾根を登って行きます。面白い木肌のカエデがあり「ウリハダカエデ」と表示がありました。周りを見回しましたが、この1本だけのようです。
ひと登りしたところで眺めが良い場所がありました。ベンチもおいてあります。道は尾根を登っていくのですが、痩せ尾根のところには両側に木の柵がつけられていました。
山頂の手前に分岐点があります。これは、秋畑稲含神社を経由して駐車場の方へ回って行けるルートととの分岐点です。ここまで非常にゆっくりのペースですから45分程かかっています。
登山道は急な坂にはコンクリート製の丸太による階段が作られており、部分的には太い鎖が取り付けられているところもあります。崖の手前にはロープが張られ、さらに危険な崖沿いの道には柵もあります。
しばらく急坂を登っていくと、坂の上に白い建物が見えてきました。これは稲含神社の門にあたる建物です。その奥に立派な神社がありました。稲含山は農耕の神として信仰されていたとのことです。稲含山は下仁田の人たちにとって大切な山なのでしょう。白い建物の壁にはこの地方の小中学校の校歌の歌詞が貼ってありましたが、そこにも稲含山が歌いこまれていることがわかります。
山頂へは、神社と反対側の急坂を登って行きます。神社の脇には、簡素ながらトイレもありました。トイレの外壁には何か書かれた紙が貼ってあり、見ると稲含山は雷がよく発生するところであると、注意を促すものでした。
神社からの急坂を登りきると目の前が急に開け、山頂に飛び出しました。思わず声が出るほどの展望です。やや霞んでいますが、雪をまだいただいている八ヶ岳が見え、さらにその右奥にも雪山が見えていました。北アルプスなのでしょうか。もっと空気の澄んだときでしたらもっと綺麗に見えることでしょう。
航空母艦のような荒船山が山並みの奥に見えています。ラクダのこぶのような鹿岳や四ッ又山は稲含山よりも低く、見下ろす感じです。
ヤマツツジは山頂だけでなく、途中でも見かけましたが、時期的にはもう終わりのようです。
山頂で、私は水彩を1枚描きました。妻は、しばらく一緒にいましたが、神社をよく見るために先に降りて行きました。
山は下りの方が事故が起きやすいのかもしれません。落ち葉の下の小石や枝で滑ることもあります。山慣れない妻は1歩1歩ゆっくりと踏みしめて降りて行きました。登りとほぼ同じ時間、山頂付近の神社から下の鳥居まで1時間かけて降りました。
登りには気づかなかったのですが、登山道の端が急な斜面になっているところは登山道の端に白くラインが引いてありました。
安全に山登りが楽しめるように地元の人たちが努力している山なのだと思いました。
今回、西上州の山を色々調べるきっかけはこの山域についていくつかのことが重なったことにありました。一つは、クライマーの山野井さんの本を読んでいたら、西上州の一本岩の初登攀のことが載っていたのです。その数日後に、山登りの大先輩の横山厚夫さんから昭文社の「西上州」の地図をいただきました。さらにその直後に西上州の山岳ガイドをされ、昭文社の「西上州」の執筆をされた、打田鍈一さんと山歩きを一緒にする機会があったのです。
そしてさらにおまけのようにあるのが「下仁田の山歩き」というパンフレットを手に入れたことです。
これは、下仁田町役場の商工観光課が作っており、下仁田についてのホームページを見ていて見つけたのです。
下仁田町役場へ問い合わせをしたところ、このパンフレットとそのほかにも下仁田の観光案内のパンフレットを送ってくれたのです。このパンフレットに紹介されているのは下仁田町周辺の12の山についてだけですが、それぞれの山について見やすくわかりやすい解説がされています。
今回は地図として正確な昭文社の地図と、より詳しい説明の「下仁田の山歩き」の両方を使って稲含山の山歩きをしました。
さらにおまけです。山を降りてきたらお昼すぎです。下仁田の町で食事をするつもりでしたので、町営無料駐車場に車を停めて歩きました。細い路地に入ったのですが、表示は「中央通り」です。そういえば、この通りの端には諏訪神社がありました。細い通りではありますが、下仁田の古くからのメイン通りなのかもしれません。下仁田は「昭和レトロ」といったキャッチフレーズで観光を売り出しています。今日は人通りもまばらでしたが土日はもう少し賑わっているのかもしれません。
観光パンフレットは色々な種類があって手がかかっているのですが、町並みはあるがままというのが私には良いと思いました。あまりお金をかけていないと言うか、ごく自然な感じなのです。
山歩きのついでにちょっと歩いてみるのも良いと思いました。