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秋田での陶芸

 秋田の象潟に友人のS氏が作った穴窯と呼ばれる陶芸窯があります。12日に窯づめを行い、13日から16日まで焚きました。昼夜焚き続けなので、窯焚きをする人は人数がいた方が楽なのですが、今回はほぼS氏と私の二人で焚きました。

 

 

 秋田へ向かう途中、たいてい私は新潟の笹川流れという景勝地でキャンプをします。

 

 笹川流れと呼ばれる景勝地は海辺に様々な大岩が続き、砂浜や磯など変化に富んだところです。水は透明度が高くて美しく、潜ると小魚が泳いで行くのがよく見えます。

 

 ホウヤハマというキャンプ場にテントを張りました。最初、もっと波打ち際に張ったのですが、近くまで波がきて、慌てて奥に移しました。

 12日に窯の掃除と窯づめを行いました。

 窯づめの作業が大変です。狭い中で、体を曲げたまま、2時間はかかります。写真は、窯づめの様子ですが、この前に窯の中の掃除を行います。

窯は穴窯と呼ばれる一室だけの窯です。

 手前の器には粘土の玉が入っており、これを赤貝の殻に詰めて作品の土台にします。

 棚板に直接作品を置くと、後で棚板から取れなくなってしまいます。粘土の玉だけを作品の下につけて棚板に置いても良いのですが、赤貝の殻を挟むと作品に赤貝の模様が作品について、味わいのある作品となるのです。


 13日の朝7時半から焚きはじめました。最初はあぶり焚きと言って、あまり温度を急に上げずに焚いていきます。今回は、窯の手前に生乾きの作品があるので、窯の外で焚き始めました。14日の朝まで200度ぐらいを維持して焚きました。


 窯の中も十分温まったので、14日の朝からどんどん焚いていくことになりました。窯が温まっているので温度が上がります。8時前で700度を越しました。お昼前には1000度を達しました。

 薪を入れると煙突から黒い煙が上がります。窯のある場所は山の中で、広い芝生も広がっているので、火事になる心配もなく、他人に迷惑がかかることもありません。なかなかこうした環境の良い場所はありません。難点は水が無いことで、下から汲んで持って来なければなりません。


 1150度の窯の中の様子です。1150度を越えると薪をくべた時は煙突から炎が吹き上がります。

東京地方は連日雨のようでしたが、秋田は天気が良く、14日の夜には快晴となり天の川が見えました。

 14日から15日に日付が変わる頃窯の温度は1200度に達しました。

私は早朝に強いので、先に寝て深夜1時頃から私の窯焚きの当番です。


 15日の夜、S氏の当番の時に窯の温度は1300度に達しました。深夜に私が交代した時は、1280度ぐらいでした。薪をくべると焚き口から炎が吹き出してきます。薪のくべ方次第ですぐに1300度まで上がります。

 16日の朝、S氏は、作品の取り出しをしてみると言いました。



 窯の一番手前の横に、S氏は途中で取り出せるように徳利を3つ置いていました。鉄の棒で取り出そうとしましたが、降り積もった灰が溶けて水飴のようになっており、それが棚板の方まで流れていてくっついていました。それを強引に外して窯の外へ取り出しました。

 薪の松灰が溶けて流れ、いわゆるビードロという状態になっていました。粘土は古信楽ですが、取り出しを行うと、表面は白っぽくなるのだそうです。左端のものは、おがくずの中に突っ込んで炭化させた色です。

 どうやら手前の作品は、灰が流れて棚板にくっついてしまったようです。

まだドロドロに溶けた状態ですから、いくつかは薪の熾の中に引き落として救うことにしました。私の丼は中に2つ蕎麦猪口などを重ねたので、それらが全部くっついているものを思われます。

 1300度を超える温度なので、それに耐えられる粘土や作品の置き方を考える必要があります。

1280度ぐらいに温度を抑えるという方法も考えられますが、薪の松灰が溶ける温度はかなり高温なのです。1280度ぐらいで抑えるなら、もっと長い時間焚く必要があるかもしれません。今回は、もうある薪はほぼ使い切りました。

 16日の午後に窯焚きを終了し、窯閉めを行いました。窯閉めは焚き口や煙突や隙間などを粘土やレンガで塞ぎ、窯がゆっくり冷えるようにします。

焚いた日数と同じ日数を冷ますことになります。

実は、冷める段階も陶芸の焼成では大切なのです。

 陶芸の窯焚きを行う人は、窯を閉めたらあえてどこかへ旅行し、窯の近くにいないようにすることもあります。窯の近くにいるとどうしても中の作品が気になって、窯を開けて様子を見たくなってしまうのです。

 以前、ちょっと様子を見るだけと言って焚き口のレンガを外しましたが、見るだけでおさまらず、どんどんレンガを外してしまったことがありました。

 窯はできるだけゆっくりと冷ましたいところなのですが、この窯はあちらこちら痛んでいて、どんどん冷めていってしまいます。

 17日の朝には500度台まで下がっていました。ただ、温度計の温度は窯の中の空気の温度ですから、作品の温度はもっとあるとは思います。

 窯出しは、後日改めて日を決めて行うことになりました。一旦東京へ引き上げます。